ジャンル豊かな古書の宝庫「コンコ堂」【秘蔵の1冊、見せてください!第2回】

コンコ堂
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阿佐ヶ谷駅北口を出て、ケヤキ並木が美しい中杉通り内側の商店街(旧中杉通り)を進むこと約5分。白い日よけと、優しい字体のロゴが印象的な「コンコ堂」が姿を現します。

自動ドアを抜けると、スポットライトと白熱電球がかもし出す穏やかな光に、BGMの柔らかな音色。せわしない外の空間から切り離され、店内だけ時間の流れが止まっているような印象を受けます。

店内を巡ると、音楽、文学、詩、マンガ、写真、デザイン、絵本、暮らし、文庫など、取りそろえられた本はジャンル豊かで、サブカル、旅の本、女性向けの本も充実。どれもが丁寧に扱われ、セレクトショップの佇まいで大切に並べられています。

そんな、今や阿佐ヶ谷の人気スポットとして名を馳せているコンコ堂。
第2回、秘蔵の1冊見せてください!では、どんな本と出会えるのでしょうか?

第1回はコチラ
読書と手紙にまつわるお店「Amleteron(アムレテロン)」【秘蔵の1冊、見せてください!第1回】

関係者の思いと愛着が詰まった1冊「星を撒いた街」

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―どの本も宝物だと思いますが、特に「秘蔵の一冊」を挙げていただけませんか?

天野 こういう質問をされた時はいつも「上林暁 傑作小説集 星を撒いた街」になってしまいます。新刊なんですが。

―灰色の表紙に山吹色の布張りの背表紙、銀箔押しのタイトルと、しゃれた装丁ですね。光の角度によって星のようにきらめき、素敵です。特にこの本を推す理由を教えていただけますか?

天野 上林暁といえば「阿佐谷文士」を代表する作家であり、その魅力に手軽に触れられる入門編としても最適な一冊だからです。この本がずっと売れ続けるような本屋になりたいと常々思っています。

―出版社は吉祥寺の「夏葉社」さんですね。

天野 1976年生まれの島田潤一郎さんが、吉祥寺でひとり営んでいる小さな出版社です。2009年9月に創業、埋もれた作品の復刊を主としており、うちでも新刊書を含め常時置いています。親交が深く、一緒に成長していきたいと思うようなおつきあいです。

上林暁というと、自分の生活の身辺に材をとった、いわゆる「私小説」の作家です。奥さんが精神を病んで入院したり、ご自身も60歳で脳出血を起こし、以降、寝たきりの生活になって、口述筆記で後期の小説を書き継いだり、波乱に満ちた生涯をおくった方です。

長く杉並に居を構えており、阿佐ヶ谷文士村の代表的なメンバーの一人です。

―作品は、内容的にはどのようなものなのでしょうか。

天野 氏の作品の中から七編を、京都にある古書店「善行堂」の店主である山本善行氏が集めたものです。精神を病んだ妻を想いながら、川べりに月見草を摘みに行く「花の精」。乞食のなりをした、謎めいた詩人に思いをはせる「諷詠詩人」。そして表題作の「星を撒いた街」。どれもそれぞれの味わいがある素晴らしい作品ばかりです。

―筆者に加えて、出版社、編集者。皆さんの思いが凝縮した1冊といえますね。

手づくりならではの温かみとこだわりに満ちた店内

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―映画やドラマの撮影の申しこみが後を絶えない、従来の古書店のイメージを覆すモダンな店内ですが、お店を開くにあたってのご苦労などお聞かせください。

天野 もともとは中古のブランド品を扱うお店でしたが、予算の関係で、内装工事は約2ヶ月かけ、夫婦で一から行いました。床を削ったり天井のペンキ塗りをしたりと、苦労続きを何とか乗り越え、2011年6月20日にオープンしました。

―ご夫妻の愛情とこだわりが詰まっているのですね。重厚感のある可動式の本棚に目が行きますが、こちらは特注品でしょうか?

天野 家具製作は、西荻窪の松岡工房にお願いしました。壁面本棚も可動式本棚も、厚さ30ミリのパイン集成材を使用しています。可動式本棚の高さは180センチ以下に抑え、ちょっと傾きを持たせました。通路間のスペースをゆったりとって配置してあります。

―見やすくまた本を手にとりやすいような工夫がされているわけですね。店内を巡って気づくのは、ほぼオールジャンルの書籍が網羅されていること。これには理由があるのでしょうか?

天野 店名の由来ともなった「玉石混淆(ぎょくせきこんこう)」―間口を狭めず、色々なものを幅広く受け入れようというポリシーに基づいています。自分の個性を打ち出して何かに特化するのではなく、多様な書籍が分け隔てなくバランスよく並べられ、阿佐ヶ谷の人たちが気軽に使ってくれる、「街の本屋」でありたいと願っています。

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―カウンターで販売されているアクセサリーも、店内に彩りを添えていて素敵です。ご自分の店を構えるにあたって阿佐ヶ谷を選ばれた理由は何でしょうか?

天野 「音羽館」が西荻窪にあったり、その他にも古書店が多かったりすることから、主に中央線沿いを探し求めました。

高円寺、阿佐ヶ谷、下高井戸など、いくつか候補地が見つかったので、カウンターを使って通行量調査をするなど納得いくまで徹底的に下調べを重ねて検討し、その結果行きついたのが現在の物件です。

開店5周年。重ねる創意工夫と愛される個性

―今年6月20日で5周年を迎えられますが、何か企画は予定されていますか?

天野 3周年記念と同様、トートバッグを製作し、5000円以上買い上げいただいた方にプレゼントします。今年はサコッシュも用意しました。

言葉を慎重に選びながら語る天野さん。熊本地震被害への義援金チャリティーセールを行うなど、社会への温かいまなざしも大切にしています。

年代問わず道行く人が素通りできない魅力と輝きを放っている「古書 コンコ堂」。人気店になっても変わらない謙虚さが、ファンを惹きつけてやみません。阿佐ヶ谷散策の機会があれば、ぜひ立ち寄りたいお店です。

コンコ堂

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所在地:東京都杉並区阿佐谷北2-38-22キリンヤビル1F
TEL:03-5356-7283
営業時間:12:00~22:00
定休日:火曜日
ホームページ:http://konkodo.com/

(取材・執筆/山中悠)

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