足元を見つめるために靴磨きを仕事に!その想いからスタートした天草製作所

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この街に来ると、なぜかホッとします。自己主張しすぎることなく、さりげなくそして控えめで、一度入るとファンになってしまう。そんなお店がいっぱいある西荻窪。このお店も、そんな魅力溢れる店のひとつ。

靴・鞄の修理を行う天草製作所1号店、そして同じ並びにある、注文靴・革小物・靴づくり教室を手掛ける天草製作所2号店。両店の代表を務めるのは、広告会社をやめて靴磨きの仕事を始めたという西森真二さん。どうしてこの仕事に惹きこまれたのか、このお店の開店に至るまでの道のりについて伺いました。

広告会社営業マンから靴磨きへ 再スタート

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―広告会社で営業マンだった頃は、どんな一日でしたか?

西森 9時半始業でメールチェックして、打ち合わせやアポ、昼からは営業、そして打ち合わせ…といった感じの一日でしたね。日によっては夜遅くまで仕事。そんな日が続いていました。

―会社をやめることになったきっかけは、何ですか?

西森 広告会社で働いているとき、アジア圏やヨーロッパ圏などに1人旅していたんです。それがきっかけで、世界をもっと見たい、自分の殻に閉じこもっていてはいけないと思うようになりました。

―もっと広い世界に飛び出していきたいという想いが強くなってきたのですか?

西森 そうですね。広告会社での仕事はやりがいもあったし、それなりに満足していたけど、もっと自分で何かをやりたいという想いが強かったんです。こうしたらよくなるのに、ということが色々あったけど、自分が社長じゃないからどうにもできないことがはがゆくて。じゃあ、自分で会社を作って社長になるしかない、と。それで、38歳のときに16年働いた会社をやめたんです。

―思いきった決断をされたのですね!おそらく反対意見が多かったのでは?

西森 反対意見がほとんどでした。親や親戚そして友達も、大反対。それは、そうですよね。まぁ、自分が反対の立場でもきっと同じように言っていたと思います。せっかく企業に勤めているのに、自らやめるなんてもったいないと思う人が多いのでは。

足元を見つめることから再出発

―会社を辞めるときには、もう靴磨きの世界に入ると決めていたのですか?

西森 いえ、実は会社をやめるときは、まだ何をするかは決まっていなかったんです。退職後に、まず足元から見直してチャンスを掴もうと思い、直感で、じゃ靴磨きだ!と思ったのです。最初は、人の靴を磨くということにどこかしら抵抗がありました。でもみんなが進んでやらないことこそ敢えてやってみたら、何か見えてくるんじゃないか、と。

憧れのNew Yorkを目標に

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―靴磨きを始めた頃ニューヨークに靴磨き台を持参し、必ずここに店を出すと誓ったとか。

西森 はい。これで勝負したいという決意を秘めて、ニューヨークに持っていきました。
今は、2号店の店内にもありますが、これを見ると当時を思い出すのと同時に、頑張らねばと気合が入りますね。靴磨き台は、僕の原点なんです。

―実際に靴磨きの仕事はどこで行ったのですか?

西森 最初は、中目黒の駅前で靴磨きからスタートです。靴磨きについてはまったくの独学でした。あるとき、「この靴いいだろう、このブランドは…」と靴について語り始めたお客さんに話を合わせるものの、実のところは靴についての知識がほとんどないに等しかったですね。それで、浅草にある手製靴の専門学校に2年通うことにしました。そうそう、歌舞伎町のホストクラブにも飛び込み営業しましたよ。

ホストクラブや会員制クラブにも飛び込み営業!?

―ホストクラブですか?靴磨きというと、上野や新橋のイメージだったので意外でした!

西森 ひと昔前は、上野や新橋の路上で靴磨きをしている方、多かったですよね。時代の流れと共に、あのあたりで靴磨きの光景を見かけることも少なくなってしまいました。

そうそう、ホストクラブの話ですが、新宿にある、ある有名な老舗ホストクラブに飛び込み営業したんです。「女性をもてなすには、それなりの身だしなみが必要です。まずは足元から」というプレゼンテーションを必死にやったのを覚えています。面白いやつだなと思ってもらえたのか、週一回約30人のホストたちの靴を磨くようになりました。中には、「自分が偉くなったら、西森さんのお店で靴を作る!」といってくれたホストもいて嬉しかったですね。

―ほかには、どんなところで靴磨きをしていたのですか?

西森 西麻布の会員制クラブでも、靴磨きをしたことがあります。そのクラブでは、靴磨きができるバーテンダーとして自分を売り込みました。そこでは、半年くらい働いていましたね。

いよいよ天草製作所はじまる

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―そして、いよいよ2013年12月14日OPENに天草製作所1号店をOPENですね。天草というのは、熊本の地名にちなんで?

西森 はい、地元の名を店名にしたからには、しっかりとやっていきたいという想いを込めています。

―お店のパンフレットに、他店で断られた靴でもOKとありますが、どんなものが他店で断られるのですか?

西森 お客様がほかの店で断られたといってお持ちになることもあるのですが、正直、これなら修理できるという靴は多いのです。お客様ときちんとコミュニケーションし、リスクがあるならばしっかりと説明して納得してもらうようにしています。

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―男性と女性だと、修理依頼の内容も違うのですか?

西森 男性は、靴底の張り替えも多いですね。使っているうちに穴があいてしまうので。
また、トップリフト交換ラバーや底の張り替えなども多いです。レザーは、通気性が良くムレを防ぎますが、滑りやすいのが難点です。一方ラバーを靴底につけると、滑りにくくなるので雨の日にもオススメです。

ただ、革靴は、あの音が魅力のひとつとも言えます。歩くとき、革靴だと「コツコツ」という音がしますよね?「コツコツ」と音がすると、その方を見なくても革靴だとわかるほど、独特の心地よい音がします。その革靴の音にこだわる方は、ラバーを付けないですね。

―では女性の場合、どんな修理メニューがありますか?

西森 たとえば、ヒールを低くすることもできます。ただ、全体のバランスを損なうことのないよう、1センチから1.5センチくらいしかカットできませんが、これだけでもかなり歩きやすさは変わりますよ。

また、女性は、外反母趾や小指のあたりがぶつかって痛いというケースが多いので、ちょっと靴を横に伸ばすだけでもだいぶ違います。ほかにも、縫い修理やサイズ調整など、いろんな修理ができるので、まずはご相談ください。

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―そして、昨年の2016年9月30日には、2号店もOPEN!こちらでは、注文靴の販売、革小物、靴作りの教室なども行っているのですね。

西森 はい。当初は1号店で注文靴も請け負っていたのですが、修理専門の店と分けることにしました。靴はヨーロッパが主流と言われてきましたが、日本人は器用で繊細です。今となっては、日本も、世界に誇る靴を作ることができると自負しています。

ちなみに、うちの店では、木型から作るセミオーダーの靴は、お客様の足にジャストサイズに仕上げるため、製作期間は約6か月になります。

―かなり長い月日をかけるのですね。

西森 はい。まず、お客様の足を採寸し、基本木型から木型やデザイン、革を選んでいただきます。そして木型を修正したら仮縫い靴を作るのですが、長いときは1ヶ月くらい仮縫い靴を履いていただくことも。店頭で履いただけではお客様に合っているかどうかわからないので、実際に仮縫い靴を履いて生活していただくのです。そして、ようやく本製作に入ります。

―パターンオーダーの靴だと、どのくらいの期間で完成するのですか?

西森 パターンオーダーの場合、約2ヶ月で完成します。お手軽にオーダー靴を楽しんでみたい方には、オススメです。ソールやカラーも自由に選べ、高級感ある革に仕上げます。

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―最後に、西森さんにとって靴とはどんな存在ですか?

西森 靴は、健康に直結するものであると同時に、気持ちがうきうきしたり、足が軽やかになるものでもあります。身だしなみは、足元からしっかりとしたいと思いますね。

―昨年はニューヨークを視察したとか。夢の実現まで、もう少しですね。

西森 とにかくニューヨークに店を出すといろんなところで公言しています。公言することで、きっと夢は実現すると思うし、引き寄せられるものがあると思うので。

―ニューヨークに出店するという目標を公言することで、実現に近づいていくのですね!実現したいことを公言することの大切さを、改めて学びました。本日はありがとうございました!

日々の質が高まる革製品と出会える場所 「天草製作所」

西森さんのお店では、ワークショップや革製品の販売なども行っています。
また革製品は財布やカップレザースリーブなど、どれもこだわりの素材を使用。日々の質を高めることができる、お気に入りのアイテムがきっと見つかるはず。センスの良さそして味わいが感じられるギフトは、喜ばれること間違いなし。

西森さんの大好きな言葉は、「It’s a show time!はじめよう」。まさに、西森さんのニューヨークに向かってのストーリーは、始まっています。昨年はニューヨークの視察も行ったそう。一つひとつ心を込めて作られた、凛とした佇まいの靴たちに会いに、天草製作所へぜひ足を運んでみてくださいね。きっと、素敵な靴との出会いがあるはず!

天草製作所

[1号店]靴・鞄修理 Repair Shop

住所:〒167-0053 東京都杉並区西荻南2-7-5 1F
Tel&fax:03-3334-6822
営業時間:10:00 – 20:00(日・祝は19時まで)
定休日:水曜日

[2号店]注文靴・革小物・靴作り教室 Factory Shop

住所:〒167-0053 東京都杉並区西荻南2-6-6 1F
Tel:03-3334-7700、fax03-3334-7500
営業時間:11時~20時(日・祝は19時まで)
定休日:水曜日

HP:www.amakusafactory.com
(取材・執筆/阿部裕子 カメラ・編集/岡田萌香)

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